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郁子咲いて第一陣の山颪
(むべさいてだいいちぢんのやまおろし)
[注・「やまおろし」とは古語で、山から吹きおろす強風。の意]
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5月22日
の
日誌
後述
本日投稿の郁子 ( むべ ) は、先月18日と26日の2日に渡って、福智山ろく花公園の入園門のきわに生っていたものを撮影したものです。
当初、本植物が蔓性とは思わず、その木の幹に掲げられていたプレートのギンモクセイと疑わずにいましたが
帰宅して、インターネットを開くと、ギンモクセイの花の画像に合致せず、名の確定に手間取りました。
どうしても投稿したく、樹木図鑑を調べているうちに、今月、この花の画像と同一の頁に出くわしました。それには、アケビ科ムべ属の郁子 ( ムべ ) と名が出ており、常緑広葉つる性木本とありました。
そうして今月再度花も散ったこの植物を見て、つる、を確認し、ギンモクセイの木に巻き付いている郁子 ( むべ ) と同定しました。
咲く郁子の銀木犀を絡み取り
(さくむべのきんもくせいをからみとり)
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ムベ
インターネットの ウィキペディア・フリー百科事典 によりますと
ムベ
目
キンポウゲ・Ranunculales
科
アケビ・Lardizabalaceae
属
ムベ・Stauntonia
種
ムベ・S.hexaphylla
学名
Stauntonia hexaphylla
(Thunb.) Deone
和名
ムベ
(郁子)
トキワアケビ
(常磐通草)
ムベ
ムベは、アケビ科ムベ属の常緑つる性木本植物。別名、トキワアケビ ( 常磐通草 ) 。方言名はグベ ( 長崎県諫早地方 ) 、フユビ ( 島根県隠岐郡 ) 、イノチナガ、コッコなど。
特徴
日本の本州関東以西、台湾、中国に生える。柄のある3~7枚の小葉からなる掌状複葉。小葉の葉身は厚い革質で、深緑で艶があり、裏側はやや色が薄い。裏面には、特徴的な網状の葉脈を見ることが出来る。
花期は5月。花には雌雄があり、芳香を発し、花冠は薄い黄色で細長く、剥いたバナナの皮のようでアケビの花とは趣が異なる。
10月に5~7cmの果実が赤紫に熟す。この果実は同じ科のアケビに似ているが、果皮はアケビに比べると薄く柔らかく、心皮の縫合線に沿って裂けることはない。果皮の内側には、乳白色の非常に固い層がある。その内側に、胎座に由来する半透明の果皮をまとった小さな黒い種子が多数あり、その間には甘い果汁が満たされている。果肉も甘いが種にしっかり着いており、種子をより分けて食べるのは難しい。自然状態ではニホンザルが好んで食べ、種子散布に寄与しているようである。
利用
主に盆栽や日陰棚にしたてる。食用となる。日本では伝統的に果樹として重んじられ、宮中に献上する習慣もあった。しかしアケビ等に比較して果実が小さく、果皮も甘いが食べにくいので、商業的価値はほとんどない。
茎や根は野木瓜 ( やもっか ) という生薬で利尿剤となる。
と説明されています。
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天智天皇の一言が語源
「むべなるかな」
むべなるかな
(いかにももっともなことであるなあ)
晩秋、ほのかに甘い赤紫の実のなるアケビ科の低木「ムベ」。この植物の語源が、天智天皇が発せられた一言だったということをご存知だろうか。
琵琶湖のほとりに位置する滋賀県近江八幡市の北津田町には古い伝説が残っている。蒲生野に狩りに出かけた天智天皇がこの地で、8人の男子を持つ健康な老夫婦に出会った。
「汝ら如何(いか)に斯(か)く長寿ぞ」と尋ねたところ、夫婦はこの地で取れる珍しい果物が無病長寿の霊果であり、毎年秋にこれを食するためと答えた。賞味した天皇は「むべなるかな」と得心して、「斯くの如き霊果は例年貢進せよ」と命じた。
日本経済新聞(2003/12/03)文化面より
むべなるかなと皇の宣ふに
(むべなるかなとすめらぎののたまふに)
[注・それぞれ古語で、
「むべ」とは「うべ」と同意味の肯定の意思を表す副詞で、いかにも。もっともなことに。なるほど。
「すめらぎ」とは、天皇。
「のたまふ」とは、「言う」の尊敬語。
の意]
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俳句上
蔵書の 草木花・歳時記・春 によりますと
季語
郁子の花
(むべのはな)
常磐通草
(ときわあけび)
ムベの花 アケビ科
別名トキワアケビとよぶように常緑のアケビの仲間で、生垣や棚にしつらえて楽しまれる。春先、蔓の上にほぼ等間隔に並んだ芽がほころび、新葉と新しい蔓、そして花序が伸び出す。新しい蔓はアケビと同じく山菜として利用する。花は黄白色で、雌花は雄花より数は少なく大きめだが、一見して雄か雌かを見分けるのは難しい。
ムベの葉は常緑とされるが、蔓の上にあるのは2年未満の葉で、それ以前のものは落葉する。花期は4~5月。がく片は内外3枚ずつあり、花弁はない。中国名は野木瓜または仮茘枝。郁の字を当てるのは、『詩経』にある薁 ( いく ) つまりエビヅルを間違えて同音の郁を使ったから、といわれる。【 果実の郁子 ( むべ ) は秋の巻参照 ) 】
と説明されています。
郁子の花命一日を寿げる
(むべのはないのちひとひをことほげる)
[注・「ことほぐ」とは古語で、ことばで祝う。祝福する。の意]
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ご完読ありがとうございました。
梨雨