特別投稿
「花 譜 の 館」
母身罷(みまか)りぬ夜半の春
享年八十八歳
この世をば憂しと思ひて泣き濡つ さりとて人の込めて生くるか
(このよをばうしとおもひてなきそぼつさりとてひとのこめていくるか)
1
H・Bユリ ( `ル レープ )
強がりの母罷り去る夜半の春
(つよがりのははまかりさるよはのはる)
そっと掛く好みの和服の藤ぞ満つ
(そっとかくこのみのわふくのふぢぞみつ)
春真昼読経の声の波がごと
(はるまひるどきゃうのこゑのなみがごと)
祭壇の遺影の顔が笑っている
(さいだんのいえいのかおがわらっている)
母罷る護りし菊の若かりき
(ははまかるまもりしきくのわかかりき)
顔に取り添ふべきやカトレアのはな
(かんばせにとりそふべきやカトレアのはな)
花冷えや別れのボタンは母指で
(はなびえやわかれのボタンはおやゆびで)
一連の式終はりたり春落暉
(いちれんのしきおはりたりはるらっき)
2
芦屋港
(あしやこう)
ご完読ありがとうございました。
梨雨