「花譜の館」へようこそ。
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浜木綿の崖厳しうして領巾を振る
(はまゆうのほききびしうしてひれをふる)
[注・それぞれ古語で、「ほき」とは崖。「きびし」とは険しい。
「して」とは、形容詞、形容動詞および同じ活用型の連用形、助動詞「ず」の連用形、格助詞などに付く。
この句の場合、・・・の状態で。・・・で。の意
「ひれ」とは古代正装の時、飾りとして肩にかけた細長い白布。古くは男女ともにかけた。
正絹(すずし)など薄物を用い、魔よけのまじないや、別れを惜しむときなどにはこれを振った。]
2
望むべき玄海青し浜木綿の花
(のぞむべきげんかいあおしはまゆうのはな)
[注・それぞれ古語で
「べき」とは、終止形に接続する必要義務の助動詞「べし」の連体形
「のぞむ」とは古語で、眺める。はるかに見る。の意]
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7月27日
の
日誌
後述
本日 ( 7月28日 ) 投稿の花は、芦屋町夏井ヶ浜に自生群落をつくる浜木綿 ( はまゆう ) です。
7月13、14、15日と3日連続して撮影したものです。
この花の咲く時季は梅雨にあたり、かつ若い花を青空の下で写すことはかなり難しいものがあります。
そこで、曇り空をおして13、14と撮影に出かけたのですが、だんだんに花は盛りを過ぎようとしており
その動向が気になる中、3日目は快晴に恵まれました。
幾分浜木綿は朽ちかけておりますが、それを補うだけのロケイションでした。
青い空、藍色の海、白い波の中での撮影です。
自生群落に咲く、赤い鬼百合が玉に傷といったところでしょうか。
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ハマオモト
叢書の 草木花・歳時記・夏 によりますと
季語
浜木綿
(はまゆう)
はまおもと
ハマオモト ユリ科(ヒガンバナ科)
ハマオモトといえば、学生のころによく耳にした 「 ハマオモト線 」 を思いだす。ハマオモトは、房総半島から外海 ( そとうみ ) 沿いに山口県、九州、沖縄県まで分布していて、分布域の外側をつないだ線は、年平均気温14度 ( または、最低気温マイナス3.5度 ) の等温線に一致する。
ヒガンバナに近縁だが、常緑の多年草で、帯状の葉は海辺の植物らしく分厚くて光沢があり、オモトに似ていることからこの名がついた。 別名のハマユウ は万葉の時代から親しまれ、この名の由来について本居宣長 ( もとおりのりなが ) は、随筆集 『 玉勝間 ( たまかつま ) 』 に 「 白く垂れる花の姿が木綿 ( ゆう ) に似ているからだろう」 と書いている。木綿とは、クワ科のコウゾの樹皮からとった繊維である。さらに白色で円柱形の鱗茎 ( りんけい ) を白い木綿にたとえたとする説もある。
高さ50~100センチで、多数の葉を根ぎわから広げる。7~9月、茎の先に芳香のある白い花が、20個ほど咲く。韓国の済州島、中国南部、東南アジア、インドにも分布する。
と説明されています。
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碧落や浜木綿の弁の絡みをる
(へきらくやはまゆうのよのからみをる)
[注・それぞれ古語で、「へきらく」とは青空。「よ」とは花びら。「からむ」とはまといつく。巻きつく。の意]
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現地の 芦屋町教育委員会の立て看板 によりますと
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福岡県指定天然記念物
夏井ヶ浜浜木綿自生群落
遠賀郡芦屋町大字山鹿705番地
昭和35年4月17日指定
浜木綿(はまゆう)は「ヒガンバナ科ハマオモト」のことで、常緑の多年草。7・8月
ごろ開花し白い花びらは清楚で気品があり芳香を放つ。
南方の原産で、種子が暖流に乗って漂着し繁殖したものといわれ、自生群落としては、
九州の北限である。
万葉集にも浜木綿を詠んだ柿本人麻呂の1首があるように、古代歌人にも愛された花である。
昭和62年1月
芦屋町教育委員会
と説明されています。
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浜木綿の望むや果ての水平線
(はまゆうののぞむやはてのすいへいせん)
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はまゆうの波の白さと競ひけり
(はまゆうのなみのしろさときほひけり)
[注・「きほふ」とは古語で、互いに張り合って勇み立つ。張り合う。の意]
浜木綿や寄せては返す波穂なる
(はまゆうやよせてはかへすなみほなる)
[注・「なみほ」とは古語でなみがしら。波頭。の意]
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ご完読ありがとうございました。
梨雨